研究概要 |
われわれはアトピー性皮膚炎(AD)患者の細胞性免疫の低下はCD4^+CD45RO^+メモリーT細胞の量的、質的低下に起因したThl免疫の低下によることを報告してきた.今回、ADとは逆にThl免疫の亢進が示唆される尋常性乾癬(PV)患者とADの末梢血単核球(PBMC)をThl誘導条件下およびTh2誘導条件下で培養し、Th1/Th2バランスをlFN-γ、lL-4の細胞内染色法で検討した.PBMCをCD3抗体、IL-2に加えてIL-12、anti IL-4、IFN-γのThl誘導条件下で細胞内IFN-γ産生量を検討したところ、ADでは健常人と比較して著明なIFN-γ産生低下を認めた.しかし、PVでは逆に健常人と同等もしくは増加していた.また、IL-4、anti IFN-γ、anti IL-12を加えたTh2誘導条件下で細胞内IL-4産生量を検討したところ、健常人、AD、PVのいずれも軽度の産生しかなく差を認めなかった.さらに、健常人、AD、PVのCD4^+CD45R^+メモリーT細胞の割合を比較したところ、ADでは健常人と比べて低下していたが、PVではほとんど差を認めなかった. 以上から、ADでは健常人、PVと比べて,末梢血中、Thl誘導条件下でThl型免疫反応の低下が確認されたが、Th2誘導条件下でもTh2型免疫反応の亢進は、確認することができなかった.ADの高IgE産生の誘因となるTh2型免疫反応の亢進は、末梢血中のCD4^+T細胞ではなく、実際の炎症の場である皮膚組織中で起こっている可能性が示唆される.
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