研究概要 |
Tc-99m標識ポルフィリン誘導体による腫瘍イメージングにおいて、腫瘍集積性の向上と肝集積の低減のための最適なキレート側鎖構造について検討した。マンガンポルフィリンにTc-99m標識のためのキレートとして、DTPA(エステル結合)を結合したATN-10、同じくDTPAを側鎖構造としてもち、さらにasparateを側鎖構造にもつSTA-R-12、また、DTPAよりも強固なキレートであるSCN-Bz-EDTA(アミド結合)をキレート側鎖としてもつATAを新たに合成し、これら3種のマンガンポルフィリン誘導体について、マウス担癌モデル(扁平上皮癌)を用いて、体内分布を検討した。それぞれのポルフィリン誘導体を静注後、1、3,6,24時間後に屠殺解剖を行い腫瘍および各臓器の放射能を測定した結果、腫瘍においては、3時間においてATAが最も高い腫瘍集積性(8%dose/g tissue)を示し、ATN-10,STA-R-12はこれにおとった(4%dose/g tissue)。肝集積においては、STA-R-12,ATN-10,ATAが3時間において、それぞれ7、30、57%dose/g tissueを示し、ATAが最も高い肝集積を示した。以上の結果から、キレート側鎖構造としてSCN-Bz-EDTAを用いた場合、腫瘍集積は向上するものの、肝集積も上昇が認められ、結果として、腫瘍のコントラストは逆に低下することが判明した。これに対して、エステル結合DTPAを用いた場合、腫瘍集積は若干低下するものの、肝集積も低減が認められ、結果として、腫瘍のコントラストは上昇することが示された。また、さらにasparateを側鎖構造に加えた場合、腫瘍集積を低下させることなく、さらに肝集積の低減が可能であることが示された。以上の結果から、腫瘍イメージング製剤としては、現時点ではSTA-R-12が最も優れていると結論された。
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