【目的】造影MRIにおける大動脈壁の造影と肺癌の大動脈浸潤の評価法に関する研究。 【方法】正常例として、下行大動脈周囲に病変のない24例を対象として、造影前後のMRIの下行大動脈壁とその周囲の造影所見を検討した。腫瘍の大動脈浸潤診断の評価対象として、肺癌10例(手術例6例、剖検例4例)の造影MRI所見とこれらの病理所見とを対比検討した。1.5T超伝導装置を用い、造影剤はGd-DTPAで、造影前後のSE法のT1強調横断像で評価した。 【結果】正常例では、24例中21例で造影前に下行大動脈およびその周囲が1/2周以上低信号を示しており、造影後この低信号帯は、21例全例で高信号帯として造影された。残る3例は、造影前から下行大動脈壁およびその周囲がほぼ全周性に高信号帯としてみられた。病変例による検討では、大動豚に接する肺癌10例のうち、下行大動脈とその周囲が全周性に高度に造影された5例は、いずれも大動脈からの剥離が可能で、腫瘍と大動脈の間には臓側胸膜が保たれていた。大動脈壁周囲の高度な造影効果がみられなかった5例中4例は、大動脈との剥離が困難で浸潤がみられた。残り1例では、用手剥離が可能で浸潤が確認できなかった。 【結論】1)造影MRIでは、正常の下行大動脈壁およびその周囲は高頻度に高信号に造影される。2)大動脈に接する肺癌症例で、造影MRIで下行大動脈壁およびその周囲が高信号に造影される場合は、肺癌の大動脈浸潤陰性の指標になり得る。
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