研究概要 |
以前、我々は下歯槽神経と正中神経で同一標本による連続切片とMR像の対比を行い、MR画像の分解能が優れていることを報告してきた。今回、臨床で用いられている高分解能MRで下腿の腓腹神経の神経繊維束の数、神経繊維束と神経鞘の形態を撮像し、連続切片による組織像と比較検討した。 実験には献体された屍体標本を用いた。潅流固定後に冷所にて保存されている屍体標本より、足関節上部を摘出する。標本を撮像3時間前に取り出し、室温に戻す。 高分解能MR像:1.5Tの装置(Sierra,Yokogawa Medical Systems)で腓腹神経に対して水平断のTl、T2、プロトン強調像を得る。いずれもスピンエコー法で撮像する。腓腹神経の神経繊維束と神経鞘のコントラスト・形態を摘出し、神経繊維束の数・大きさ・形態を観察する。 高分解能MR像と断面が一致するように連続切片を作成する。標本を24時間10%ホルマリンで固定した後、イオン交換樹脂(Dowex,Dow Chemical Co.,USA)で6週間脱灰する。標本をパラフィン包埋してマイクロトームにて薄切し、ヘマトキシリン・エオジン染色と脂肪染色などの特殊染色を行う。切片場で、神経繊維束と神経鞘が区別でき、神経繊維束の数、大きさ、形態を観察した。 組織標本とMR画像の対比の中で脂肪の識別能に優れているので、脂肪を含有する神経組織の分解能1mm程度が得られた。侵襲的な検査として従来の単純X像やCT像では神経の微細構造の識別は困難であるので、軟部組織の解像力に優れるMR像による末梢神経の画像診断の有用性が判った。
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