研究概要 |
我々は、概日リズム障害の少なくとも一部は、最近次々に単離されている生体時計関連遺伝子の異常に基づくと考え、遺伝子解析を続けている。 今年度は前年度(31症例、27人の正常ボランティア)に加えて25の症例、32人の正常ボランティアのゲノムDNAについてもSSCP法、PCR産物の直接シーケンス法によりメラトニン1A,1B受容体遺伝子を解析し、また、変異を伴う受容体遺伝子を培養細胞COS-7に発現させて機能変化を見た。 既に昨年報告したように、1A,1B受容体のそれぞれから2種類ずつ計4種類の変異を見出している。非24時間睡眠覚醒症候群の一人が1A,1B受容体遺伝子の双方に変異を持っていたほか、新たに、非24時間睡眠覚醒症候群の約4人に一人が1A受容体に同じ変異を持っている(正常コントロールでは約20人に一人)ことを見出し、この変異が概日リズム障害を引き起こす要因の一つとなっていることが示唆された。 これらの変異が概日リズム障害を引き起こす機能変化を伴っているか確認するため,1B受容体遺伝子に見出された変異を導入し、発現ベクターに導入して培養細胞で受容体蛋白を発現させ、放射性ヨードで標識したメラトニンを用いてその結合能を調べた。その結果、正常型の受容体より変異を伴う方が発現している受容体数が減少している傾向が認められた。現在1A受容体についても変異を導入し、発現させているところである。cAMP抑制能の変化についても確認中である 概日リズム障害患者の一部のみにメラトニン受容体の変異を伴う群が存在したことは、概日リズム障害が、異なる原因から生じた複数の疾患の集まりであることを示唆している。 現在per遺伝子の解析も平行して進行中である。
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