研究概要 |
ストレプトゾトシン糖尿病(STZ)ラットの心血管組織において、過酸化脂質含量、酸化ストレスにより活性化することの知られている転写因子NF-KB,AP-1活性およびそれらの転写因子によって転写調節されているヘムオキシゲナーゼ1mRNA発現量を検討した。4wk-STZラットでは心臓にて過酸化脂質含量が60%増加し、24wkでも160%増加していた。一方、転写因子NF-KB,AP-1活性は4wk-STZラット心臓にて活性化しており、ヘムオキシゲナーゼ1mRNA発現は4倍に増加していた。これらの増加はインスリン治療および抗酸化剤であるプロブコールの4週間の投与により改善した。また、大動脈組織においても同様の結果であった。次に、インスリン抵抗性を示す高果糖食ラットおよびZucker-fattyラットの心血管組織での酸化ストレスの有無を検討した。インスリン抵抗性ラットでは血管内皮よりのO_2^-産生が高まっており、その発生源としてNADH/NADPH oxigenaseおよび内皮型NO産生酵素が重要であった。これらの酵素活性による酸化ストレスは大動脈の内皮依存性弛緩反応を減弱させ心血管組織での過酸化脂質の蓄積を誘導した。また、STZラットでの結果と同様に、心臓および大動脈で転写因子NF-KB,AP-1の活性化を誘導し、ヘムオキシゲナーゼ1mRNAの発現が増加していた。以上、高血糖を示すインスリン欠乏型糖尿病モデルおよび高血糖を示さないインスリン抵抗性モデルの両者において心血管組織での酸化ストレスの亢進とそれに伴う遺伝子発現異常を認めた。
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