研究概要 |
伴性低リン血性ビタミンD抵抗性クル病(XLH)は、腎近位尿細管におけるリンの再吸収障害により、著しい低リン血症を呈する。このリン再吸収障害機構に関して、新たなリン再吸収抑制因子(フォスファトニン)の関与が示唆されているが、未だ同定されていない。一方、XLHの原因遺伝子としてPHEXが同定され、PHEX蛋白は、フォスファトニンの分泌に関わるプロセシング酵素と考えられている。これらの相互関係からXLHは、新しいリン調節ホルモンを解明する大きな手がかりと想定される。そこで、本研究では新たなリン調節ホルモン(フォスファトニン)の同定を目的とし、ヒトNa依存性リン輸送担体(NaPi-3)遺伝子の転写開始点上流2.4kbをルシフェラーゼ遺伝子をもつリポーターベクターに連結し、腎尿細管由来のOK細胞にトランスフェクションした(OK-B2400細胞)。その後48時間正常およびXLH患者血清存在下で培養した後、細胞を回収し、ルシフェラーゼ活性をルミノメーターにて測定した。血清5%添加では、有意差が認められなかったが、20%まで増加させると明らかにXLH患者血清でルシフェラーゼ活性が抑制された。また一方、硬骨魚類のカルシウム調節ホルモンとして知られるStanniocalcin(STC)のホモログであるStanniocalcin2(STC2)のcDNAをクローニングした。STCは腎におけるリンの再吸収を促進することから、STC2がリン再吸収を抑制する因子である可能性を考え、STC2をpMAM2-BSD発現ベクターを用い、COS-7細胞でデキサメサゾン存在下で培養させた。STC2は細胞外に分泌されると考えられるので、発現させたときの培養上清をOK-B2400細胞に添加し、NaPi-3プロモーター活性に対する効果をルシフェラーゼ法で検討した。その結果、STC2は、STCとは異なりリン輸送担体遺伝子発現を抑制し、リン輸送活性を減少させた(Ishibashi,K.,B.B.R.C.,1998)。STC2が、フォスファトニンである可能性については、今後検討する必要が考えられる。
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