研究概要 |
欧米人と日本人さらにアジア人のインスリン依存性糖尿病患者(IDDM)におけるGAD抗体陽性者の頻度は各々63〜84%,30〜50%,5〜50%と相違があることが報告されており、人種差によると考えられている。今回我々は^<125>-Iでラベルした遺伝子組み替えhumanGADを使用した新しい免疫沈降法アッセイを用いて沖縄県人における抗体陽性率を測定した。この測定系は我々がイギリス、ウエールズ大学医学部と共同で開発したものであり、感受性、特異性とも従来のブタの脳より抽出したGADを用いた測定法より優れていると考えられる。 沖縄における発症1年以内の患者(18人)では83.3%にGAD抗体陽性であり、欧米人における報告と同等の陽性率であった。発症2〜3年(患者36人)で66.7%となり、発症3年以上(患者46人)では54.3%に下降したが、これらの陽性率はアジア人における従来の報告よりは、高いものであった。 長期観察し得た14人のIDDMのうち1人の患者を除いて、高抗体価が12年間持続した。IDDM患者で自己免疫性甲状腺疾患合併の有無では、GAD抗体の陽性率に差はなかった。発症1年以内のIDDM患者では、IA-2抗体は64.7%に検出されたが、GAD抗体の陽性率に比べると低かった。今までのアジア人における報告ではGAD抗体陽性率が低かったが、これは測定方法に問題があり、感受性が低かったからではないかと推測される。 我々の研究により、沖縄県人のGAD抗体陽性率はヨーロッパでの報告と同等であると考えられることがわかった。沖縄県人のIDDMにおいても自己免疫機序がその原因として最も重要と考えられることが判明した。
|