研究概要 |
血管石灰化は骨粗鬆症としばしば合併することから、カルシウム代謝異常が血管石灰化に関与している可能性が考えられる。さらに、今までの我々の研究結果から副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)などのカルシウム調節ホルモンが血管石灰化を調節している可能性も示唆されている。そこで本研究では、活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3)が血管平滑筋細胞におけるカルシウム調節系に直接作用することにより血管壁へのカルシウム沈着を引き起こすという仮説を証明するため、ウシ大動脈由来血管平滑筋細胞(BVSMC)によるin vitroでの血管石灰化実験系を用いて1,25(OH)_2D_3の血管石灰化に対する作用について検討した。 1,25(OH)_2D_3はBVSMCにおける石灰化およびアルカリホスファターゼ(ALP)活性を用量依存的に増加させた。また、l,25(OH)_2D_3はBVSMCからのPTHrP分泌およびPTHrP遺伝子の発現を用量依存的に低下させた。さらに、PTHrP(1-34)を添加することにより1,25(OH)_2D_3の石灰化促進作用は用量依存的に抑制された。最後に、1,25(OH)_2D_3は骨基質蛋白のひとつであるオステオポンチン(OPN)遺伝子の発現を増加させた。 以上のことから、1,25(OH)_2D_3の血管石灰化促進作用は、内因性の石灰化抑制因子であるPTHrPの発現を抑制することを介するものであることが示唆された。また、ALP活性およびOPN遺伝子の発現に対する1,25(OH)_2D_3の刺激作用も血管石灰化の促進に関与していると考えられた。
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