研究概要 |
核内受容体PPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)のリガンド/促進因子が、多価不飽和脂肪酸を含む種々の脂肪酸、プロスタグランジンおよびフィブラート系薬剤の他、さらにチアゾリジン系薬剤であることが判明し、チアゾリジン系薬剤の血糖降下作用の強さが、その薬剤のPPARγへの結合の強さと関連があることや、フィブラート系薬剤によるPPARαの活性化がリポ蛋白リパーゼの発現を調節していることが報告された。さらに最近我々はPPARγのリガンドが活性酸素の消去作用、SOD様作用を有し、抗動脈硬化作用を持つことや(1)、PPARαの活性化剤もまた強力な活性酸素の消去作用を有するCuZn-SODやカタラーゼの産生を促し、PPARαがこれらのmRNAレベルを調節することをみいだし(2)、PPARαが糖・脂質代謝のみならず動脈硬化にも大きく関与することを示峻した(3)。最近では動脈硬化および炎症に関与する好中球(4)、マクロファージ、血管平滑筋細胞にもPPAR群が発現しTNF-α、iNOS、COX-2の産生抑制がPPAR群と関連することが報告され、ロイコトリエンB4もPPARαのリガンドであることが明らかとなり、抗炎症剤のNSAID(non-steroidal anti-inflammatory drug)もまた、PPARαおよびPPARγの促進作用のあることが報告されている。さらに、PPARγ促進は癌細胞のアポトーシスを促進し治療に応用できる可能性も示唆されている。以上よりPPAR群の遺伝子が糖・脂質代謝、高血圧、動脈硬化、炎症、アポトーシスに関連する遺伝子に大きく関与していることが明らかとなった。 最近、我々は血圧調節に大きく関与するヒト内皮細胞(4)においてもPPAR群が発現していることを見いだしている。内皮細胞は糖・脂質代謝、高血圧、動脈硬化、炎症、アポトーシスに関連する遺伝子の発現が多数証明され、特に酸化ストレスの防御の点からも注目され、最近我々は内皮細胞で発現しているPPAR群が酸化ストレスからの防御として重要な作用をもたらすことを示咳する実験結果を得ている。さらにこの点につき検討する予定である。 参考文献 (1) Inoue I,et al:Biochem Biophys Res Commum 235:113-116,1997 (2) Inoue I,et al:Life Science 63:135-144,1998 (3) Inoue I,et al:Biochem Biophys Res Commum 237:606-610,1997 (4) Inoue I,et al:Biochem Biophys Res Commum 246:370-374,1998
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