研究概要 |
昨年度の研究で我々は、肥満型糖尿病モデルラットと対照Leanラットの脂肪細胞を用いて、β3-アドレナリン受容体(β3-AR)刺激薬はβ3-ARの発現量を増加させ、レブチンの発現量を減少させることを示した。ヒトにおいても、β3-ARの遺伝子多型が報告され、Trp64Arg変異は肥満傾向を強め、糖尿病の発症時期を早めることが報告されている。本年度の研究では、高校・大学生や教職員の定期健康診断において、肥満度(BMI)や血圧と血清レブチン・インスリン濃度との関連やβ3-AR遺伝子多型との関係を検討した。若年者・中高年者ともにBMI,レプチン,中性脂肪(TG)は、正常血圧<正常高値<高血圧群の順に高値であった(各々P<0.01,P<0.05)。インスリン抵抗性指数(HOMA-R)は、若年者でP=0.002,中高年者でP=0.49(NS)であった。さらに収縮期・拡張期血圧は両対象において、BMI,レプチン,血糖,HOMA-R,TGと有意の正相関を認めた。多重回帰分析では、若年肥満者(95パーセンタイル以上)でのみ年令,BMIにて補正後も血圧とレプチン濃度との関連が認められた(r^2=0.39,P=0.02)。心拍数も若年者ではレプチンと正相関したが(r=0.18,P<0.001)、中高年者では関連は認められなかった。β3-ARの遺伝子多型では、30-44才の男性においてTrp64Arg変異(ホモまたはへテロ)を持つ群で血清インスリン濃度およびHOMA-Rが有意に高値であった(各々P<0.05)。PPARγの遺伝子多型に関しても検討する予定であったが、最近他施設から、日本人では頻度が少なく肥満などとの関連は認めなかったと報告されている。
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