研究概要 |
本研究の目的は、骨髄腫細胞株に見られるspontaneous apoptosisの機序とその制御機構を明らかにすることであった。CHX作用後の細胞内アポトーシス関連物質、特にBcl-2familyの発現を検討したところ、Bcl-2またはBcl-XLのアポトーシス抑制物質とBcl-XSまたはBAXのアポトーシス促進物質のバランスの不均衡がspontaneous apoptosis、CHX-apoptosisを制御していることを見出した。すなわち、Bcl-2,Bcl-XLの発現が強く、Bax,Bcl-Xsの発現が弱い細胞株はアポトーシスをおこしにくい。さらに、CHXによりBaxの発現が増強することも見出した。CHXによるBaxの発現増強は今まで報告がなく、BaxがいわゆるCHXによるsuperinductionといわれるparadoxicalな発現制御を受けるタンパク質の一つであることが示された。そこで、この関係が実際に患者サンプルでも観察されるかどうかを検討した。その結果、Bcl-2familyの発現は症例ごとにさまざまに制御されていることが判明した。すなわち、spontaneous apoptosisをきたしやすい、いわゆる劇症型骨髄腫といわれる症例では、細胞株と同じくBcl-2(-)、Bax(+)のパターンを示した。病像との関連では、病期が進むとBcl-XLの発現が増強する傾向が見られ、また、髄外浸潤例にもBc1-XLの発現が多く見られた。化学療法の前後では、Bcl-2、Bcl-XLの発現は変化せず、薬剤耐性化に直接関わる証拠は得られなかった。以上より、骨髄腫細胞のspontaneous apoptosisにはBcl-2familyの発現が深く関わることが示唆された。
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