研究概要 |
Thrombopoietin(TPO)は巨核球系前駆細胞に作用し、血小板への分化を誘導するcytokineで、巨核球、血小板系細胞に特異的に作用すると思われていたが、TPOの受容体であるc-mplは種々の造血細胞に発現しており、TPOが好中球機能を刺激すること、赤芽球系細胞の増殖、分化を刺激すること、多能性幹細胞を維持することなど、TPOが種々の細胞に作用する可能性が報告されてきた。MTT法を用いて、白血病細胞増殖刺激作用を検討すると、急性白血病患者の39%がTPOによりin vitroでの増殖が刺激された。またTPOのtransgenic mouseでは骨硬化症が認められている。骨代謝は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスで調節されており、破骨細胞は、造血細胞と同じ起源の細胞より分化することから、破骨細胞分化に対するTPOの作用を検討した。方法はC3H/HeNマウスより非付着性骨髄細胞を採取し、骨髄間質細胞株ST2と1,25(OH)2D3及びdexamethasone存在下で共培養し、破骨細胞を分化誘導し、TPO添加による影響を検討した。TPOは破骨細胞を用量依存性に低下させた。TPO投与時期をずらしたところ、培養開始時から添加した場合のみ有意な抑制効果が認められた。また、この抑制効果は抗TPO抗体の同時添加により阻害された。上記共培養をウシ大腿骨から作成した骨薄片上で行い、吸収窩を観察した。TPO添加群では吸収窩の数及び面積が減少した。これらの作用が血小板産生刺激による間接作用の可能性について、血小板より産生される(TGF-β、PDGFについて検討した。破骨細胞培養系にTPOとともにTGF-β、PDGFの中和抗体を添加したところ、TPOの破骨細胞分化抑制効果が低下した。さらに、TGF-β、PDGFは破骨細胞分化を用量依存的に抑制した。以上より、TPOはTGF-β、PDGFを介して破骨細胞の分化誘導を初期の分化段階において形態的にも機能的にも抑制すると考えられた。
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