研究概要 |
我々は、白血病株細胞の分化誘導時の培養上清中にアポトーシスを促進する活性が存在することを見出し、その活性物質が内皮細胞由来インターロイキン8(IL-8)であると同定した。また、組み換え型内皮細胞由来IL-8は各種白血病細胞株(K562,HL-60,Jurkat,THP-1,U937,KG-1など)に対してアポトーシス誘導活性を示した(Terui,Y.,Hatake,K.et al,Bioqhem.Biophys.Res.Commun.243:407-411,1998.)。 さらに、内皮細胞型IL-8の生体内での生物学的意義を追究した。正常臍帯内皮細胞を用いた研究では、IL-1やTNFによる刺激および白血病細胞と内皮細胞との相互作用で、内皮細胞は内皮細胞型IL-8を放山し、そのIL-8は白血病細胞に対してアポトーシス誘導効果を示すことがわかった。このことから、内皮細胞には腫瘍組織への血管増生といった機能とは逆に内皮細胞型IL-8の放出によって抗腫瘍効果を有することを新しく意義づけた。また、Balb/cヌードマウスの腹腔内および皮下の白血病細胞に対する内皮細胞型IL-8のin vivoにおける抗腫瘍効果について検討した。内皮細胞型IL-8投与群ではTNF投与群とほぼ同程度に腹腔内および皮下の白血病細胞の増殖抑制がみられ、それは腫瘍細胞へのアポトーシス誘導効果によるものであった。一方、生食投与群、単球型IL-8投与群ではアポトーシス誘導効果および腫瘍の抑制効果が認められなかった。(Terui,Y.,Hatake,K.et al,Blood 92:2872-2880,1998)。 現在、内皮細胞型IL-8結合夕ンパク質の遺伝子クローニングおよびその作用機序の解析、新しい白血病治療の開発などが進行中である。
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