研究概要 |
糸球体上皮細胞足突起間のslit diaphragm(SD)の構成蛋白p51を認識する単クローン抗体5-1-6により誘導される蛋白尿の発症機序の検討を続けてきた。昨年度までの検討で、p51の正確な局在、並びにSD部の構成蛋白であると報告されているもう一つの蛋白であるZO-1の局在との異同を明らかにした。また蛋白尿出現時のp51とZO-1の動態を検討した結果、蛋白尿がピークとなる抗体静注5日目では、p51のみならずZO-1もSD部から消失していることを免疫組織化学的手法、Western blot 法を用いて証明した。これらの蛋白が消失しているにも関わらず通常の電子顕微鏡を用いた検討では、足突起の融合などの形態学的変化を見い出すことはできず、SD構造の分子レベルでの微小な変化が係蹄壁のバリアー機能の破綻を招いたと考えられた。本年度(平成10年度)は、これらp51,ZO-1の局在変化のメカニズムを解析するため、単離糸球体を用いたin vitroの系を確立し、各種阻害剤に対する感受性試験を行った。検討の結果、5-1-6抗体がその対応抗原であるp51と結合すると、Ca^<++>依存性のcalmodulin-cytoske1etonの系を介したtubuline非依存性、actin依存性の機序によりp51,ZO-1がSD部から遊離し、その結果引き起こされるSDの機能低下により病的蛋白尿がもたらされたと考えられた。これらの観察結果は、98年度第31回米国腎臓学会総会において報告した((J Am Soc Nephrol 9,499,1998 abstract)。また胎生12日目に取り出した後腎原基を9日間培養するとin vitroにおいてもp51が発現することを確認した。現在このp51合成期の腎器官培養材料から作製したcDNA libraryを用いてp51分子のクローニングを継続中である。
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