研究概要 |
1) 各種履瘍組織内リンパ球における膜型リンホトキシンおよび、その遺伝子の発現 前年度の研究で、腫瘍組織内リンパ球やその担癌患看における末梢血リンパ球の膜型リンホトキシンの発現の検出を試みたが、採取した状態での有意な発現は認められなかった。また、膜上にリンホトキシンを発現していないリンパ球では、その遺伝子の有意な発現を認めなかった。培養リンパ球においては、腫瘍の刺激にてサイトカインを発現を認めたという報告もあるが、生体内においては腫瘍細胞の刺激による膜型リンホトキシン発現は認められなかった。そこで、手術侵襲という刺激により、膜型リンホトキシンの発現が認められるかどうかを検討した。 2) 術前、術後の末梢血リンパ球における膜型リンホトキシンの発現 消化器外科手術患者22名、胸部手術患者8名、乳線手術患者3名、心臓手術患者7名より、術前、術後の末梢血リンパ球を採取し、その膜型リンホトキシンの発現を測定した。測定にはリンホトキシンに対するポリクローナル抗体とモノクロナール抗体を用いて比較した。まず、採取した状態で測定したが、いずれの抗体においても有意な発現を認めず、術前と術後の比較いおいても、有意な差を認めなかった。やはり、膜型リンホトキシンの発現にはIL-2による刺激が必要であり、採取したリンパ球を5日間IL-2刺激にて培養し、その発現を検討することとした。(1)年齢別の比較:高齢者では発現が低下しており、相関が認められた。(r=-0.331,p<0.05)(2)良性疾患と悪性疾患との比較:悪性疾患で発現が高い傾向が認められた。(3)手術前、手術後の比較:術後1日目では発現が低い傾向にあり、術後1週間、2週間後に、徐々に発現が増加した。(4)手術侵襲による比較:出血量1000ml以上とそれ以下とで比較すると、1000ml以上では発現が有重に低下していた。(p<0.05) 以上の結果より、リンホトキシンの発現はリンパ球の活性化能に因るものであり、術直後や侵襲の大きな手術ではむしろその発現が低下することが示された。
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