研究概要 |
敗血症はしばしば臓器不全を合併して重症化するが、この成因には凝固線溶異常および血管内皮障害が関与していると考えられている。われわれはまず、この詳細を臨床例において検討した。次に、敗血症性多臓器不全を反映するモデルとして新たにラット微量エンドトキシン持続注入モデルを作製し(日救急医会誌8:103-110,1998)、アンチトロンビンIIIによる凝固機能調節を行って、これによる著明な生存率の改善(17→100%)や臓器保護効果を確認した(日救急医会誌9:45-62,1998)。(以上、奨励研究(A)08770940研究成果) また、その作用機序として、肝微小循環の観察により、(1)類洞血流量の改善(2)類洞径の拡大(3)好中球の粘着抑制を確認した(日救急医会誌9:579-586,1998)。(以上、奨励研究(A)09770903 H9年度研究成果) 今回の研究では上記の微小循環改善の発現機序を検討した。その結果、アンチトロンビンIII投与により、TNF,IL-4,CINCなどのサイトカインレベルには変動がみられなかったが、プロスタグランジン I2の有意な産生増加が観察された。以上の結果から、アンチトロンビンIIIは敗血症時に血管内皮機能調節によって微小循環を維持し、臓器障害の発生を抑制しているものと考えた。(A)09770903 H10年度研究成果)
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