研究概要 |
(目的)我々は心停止ドナーからの肝移植を可能にする目的で研究を行っているが、今回はドナーの条件を臨床に近づけるため、ショック状態持続後心停止ドナーからの肝移植において低温持続灌流保存法とpentoxifylline(PTX)併用の有効性について検討した。 (対象と方法)体重25kg前後のブタを用いて同所性肝移植を施行した。ドナーは脱血速度を調節し収縮期圧60mmHgを60分以上続けた後に心停止させ大動脈と門脈からユーロコリンズ液で初期灌流を行い肝臓を摘出し、4群に分けて2時間保存した。 保存法,保存液,保存条件 I群 単純冷却保存,UW液,4℃ II群 低温持続灌流保存,Belzer's gluconate液,門脈より8℃,8mmHgで灌流 III群 同上,同上,肝動脈より8℃,8mmHgで灌流 IV群 同上,同上+PTX1g/L,同上 (検査項目)手術終了時に血中AST,LDH,ヒアルロン酸(HA),動脈血ケトン体比(AKBR)を測定した。II,III,IV群では灌流液のAST,灌流保存中の肝血管抵抗を測定した。全群移植後1時間に肝生検し光顕,電顕像を比較するとともに生存率を検討した。 (結果,考察)手術終了時のAST,LDH,AKBRはI,II,IV群,VIII群での順で良好な結果を得た。ヒアルロン酸はI群に比べ他の群が高かったがII群よりもIII,IV群が低かった。48時間以上の生存例はI群1/4例(25%),II群1/5例(20%),III群1/5例(20%),IV群5/8例(62.5%)であった。 以上よりショック状態持続心停止ドナーからの肝移植にはPTXを加えた経肝動脈低温灌流保存がgraft conditioningの面から有効であると思われた。
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