研究概要 |
肝,胆道系悪性腫瘍に対する拡大肝切除術において,術後の肝不全予防目的に切除予定肝葉の門脈塞栓術が一般的に施行されている.我々は本術式(門脈塞栓術)による肝血流量の変化,肝機能に及ぼす影響についての基礎的研究を施行している.1.対象と方法:1996年4月より1997年12月までに13名の患者に切除予定肝葉の門脈塞栓術を施行した.内訳は男性8人,女性5人,平均年齢67歳,疾患別にみると胆管癌10人,胆嚢癌1人,転移性肝癌1人,良性胆管狭窄1人であった.門脈塞栓術は回結腸静脈的に施行したものが12人,経皮経肝的に施行したものが1人,全例門脈右枝を塞栓した.以下の検査はすべて患者からのインフォームドコンセントを得てから施行した.(1)有効肝血流量の変化;薬剤D-ソルビートルを負荷しその血漿中クリアランスを有効肝血流量の指標とし用いた.検査日時は門脈塞栓術前日,術直後,術後7日目,術後14日目とした.血中D-ソルビートル濃度はemzymatic spectrophtometric methodにて測定した.(2):肝細胞固有の代謝能(摂取能,排泄能)の変化;薬剤アンチピリンを経口投与後の血漿中クリアランスを肝機能の機能総量として使用した.検査日時は門脈塞栓術前(4日前),術後14日目の計2回.血中アンチピリン濃度の測定はHPLCにて測定した.(3)術前,術後約2週間後の肝CTより,塞栓葉,非塞栓葉の体積を計算した.2.結果:各測定日による有効肝血流量の変化はなかった.アンチピリンクリアランスにも塞栓前後での有意な差は認めなかった.非塞栓葉の肥大率は平均136%であった.3.考察:現在までの結果より門脈塞栓術肝機能,肝血流量に悪影響を及ぼすこと無く非塞栓葉を良好に肥大させる有用な手技と考えられる.
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