研究概要 |
本研究は癌細胞の細胞増殖の異常に対し、細胞間接着がどのような関与をしているかを明らかにしようとするものである。ここ1,2年の進歩によりβ-cateninがkey molecule として働いていることが明らかになりつつあり本研究もβ-cateninを中心に行われた。1)大腸癌におけるβ-cateninのチロシンリン酸化について調べた。癌組織において有意にチロシンリン酸化の亢進が見られた。 (British Journal of Cancer,77,605-613,1998)2)細胞画分法により、細胞内に存在するカドヘリンと結合しないtreeのβ-cateninを簡便に定量する方法を開発した。食道癌で検索したところ約半数の症例で癌組織におけるfreeのβ-catenin増加を認めた。さらにこれらの症例にはAPCやβ-catenin自身の遺伝子変異は存在せず、未知のメカニズムがβ-catenin増加に関与していることが示唆された。(International Journal of Cancer,1999 in press)3)細胞周期を同調させた状態では、特にM期における細胞間接着の阻害は顕著であったが、β-cateninの発現量、リン酸化状態には有意な変化は認められなかった。 (ne9ative data)4)細胞周期調節分子との関連を検討した。β-cateninと各種サイクリンとは有意な関連は無かったが、p27KIPlとβ-cateninの発現に関連を認めた。(投稿準備中)両者はともにユビキチンプ口テアソームで分解されており、今後はこのプロテアソーム系を中心に研究を進めたい。
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