研究概要 |
胃癌細胞をモデルとして,抗癌剤によるアポトーシス誘導機序を解析し,誘導因子を標的とした新しい癌化学療法の開発を目的にし,平成10年度に記載された実験計画書により得られた知見は以下の通りである.(1)アポトーシス誘導関連遺伝子gadd153導入による抗癌剤感受性の増強はアポトーシス誘導に一致し,従来の抗癌剤感受性規定因子MDR1,MRP,Topoisomeraseの発現に変化は認められなかった.すなわち,アポトーシス誘導シグナル伝達の修飾による感受性の増強であることが示唆された.(2)アポトーシス誘導関連遺伝子gadd153,bcl-Xs,bax導入により,複数の抗癌剤に対する感受性が増強され,また抗癌剤による関与遺伝子の相違の存在が示唆された.(3)各誘導関連遺伝子導入により,他の関連遺伝子の発現量の増加がみられ,誘導関連遺伝子間のアポトーシス誘導への相互作用の存在が示唆された.(4)アポトーシス誘導遺伝子導入クローンのヌードマウス皮下移植腫瘍に対する抗癌剤投与は,アポトーシス誘導による腫瘍増殖1制効果を認めた.以上から,癌化学療法におけるアポトーシス誘導遺伝子を分子標的とした導入あるいは修飾による抗腫瘍効果増強の可能性が示唆された.
|