研究概要 |
胆道の形態形成は,前腸からの肝臓憩室の頭側肝窩が肝臓の原基となり,尾側肝窩は拡張して胆嚢を形成しその茎部が胆管となり,この調節機構には上皮間葉相互作用が必要である.胆道上皮の形態形成の解析のため胆嚢上皮細胞のコラーゲンゲル培養を用いて,形態形成のメカニズムと線維芽細胞を含めた種々の細胞増殖因子の形態形成における影響について調査してきた. 1, コラーゲンゲル立体培養による胆嚢上皮細胞の嚢胞形成には,小胞体からトランスゴルジネットワークを介した細胞表面への分泌小胞,即ち極性を持ったVAC(vacuolar apical component)のエキソサイトーシスによる細胞表面への輸送と融合により,極性を獲得し嚢胞を形成する過程が明らかとなり,EGFやHGFやEpimorphinをはじめとした細胞増殖因子や線維芽細胞培養上清は,VACエキソサイトーシスを通じて嚢胞形成や増殖活性を促進することがBrdU免疫染色と電子顕微鏡にて観察された.また,この調節機構には細胞間接着装置が密接に関係してることが判明し,電子顕微鏡にてこれらの接着装置の増強が確認された. 2, TGF-blによるMesenchyme-Like Transdifferentiation multifunctional cytokineであるTGF-blを添加すると胆嚢粘膜上皮細胞(コラーゲンゲル培養)は,全く異なった極性を喪失した分枝形態をとることが判明し,これはEGFによって増強されさらにはネットワーク構造を形成した.この過程を上皮系マーカーとしてcytokeratin,間葉系マーカーとしてvimentinの抗体を用いて免疫染色した結果,この変化は上皮細胞のMesenchyme-Like Transdifferentiationと考えられ,超微構造的には細胞間接着装置の減弱が観察された. 以上の知見を論文にし,現在Journal of hepatologyに投稿中である. また,今後線維芽細胞培養上清中の形態形成因子のcharacterizationを行う予定である.
|