(対象および方法)p53、c-myc遺伝子に関して癌遺伝子産物の染色を行い、肝細胞癌の予後判定因子としての有用性を検討した。対象は教室で施行した肝切除例のうち、病理組織学的に変性壊死のない52例である。Shiらの方法に準じ、一次抗体としてDO-7(DAKO)、c-myc抗体(MEDAC Diagnostika)を用い、免疫染色を行った。 (結果)肝細胞癌の分化度別にp53染色の陽性率を比較してみると。分化度が低くなるにつれ、陽性率は高値を示した。またp53染色陽性症例では陰性症例と比較し、増殖活性を示すKi-67 labeling indexは有意に高値を示した。肝切除後再発部位とp53染色性を検討してみると、p53染色陰性例はいずれも残肝再発であるのに対し、p53染色陽性例では肝外再発例が存在し、有意差を認めた。p53染色陽性例と陰性例で累積生存率を比較してみたが有意差は認められなかった。しかし、c-myc染色陰性症例でp53染色陽性例と陰性例の累積生存率を比較してみると、陰性症例で有意に高値であった。 (結語)肝細胞癌は多数の遺伝子が関与しており、p53・c-myc遺伝子は互いに関与しながら、肝細胞癌を進展させていくことが疑われ、p53・c-myc蛋白染色は予後判定因子として有用であることが示唆された。
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