研究概要 |
血行性転移においては細胞接着分子のICAM-1,VCAM-1,ELAM-1等の関与が明らかになってきた.従来の研究において胃癌の肝転移症例における可溶性接着分子と各リガンドが非担癌者や非肝転移症例に比して有意に上昇していることを確認し発表した。 これをふまえ、従来から継代しているラット大腸癌細胞F-344ラットを用いて脾注による経門脈的な肝転移モデルをかさねて継代することにより易転移性の好転移株を作成。血行性転移細胞は、細胞そのものに転移しやすい性格を有するという仮説に基づき、この継代を続けた好転移、細胞の特徴を明らかにする目的で上記接着分子につきFACScanを用いた細胞表面抗原分析を行い糖鎖抗原SLXの発現を確認した。現在好転移株の継代を続け4代目に達しており、近日5代目の細胞につき確認を予定している。 臨床的に、同時性肝転移症例を含めた進行胃癌症例につき、可溶性接着分子についてELAM-1およびSLX,SLAの血清値を組み合わせ,個々にCut off値を設定し,胃癌肝転移に対する診断能について検討を行った.その結果これら接着分子の血清値による肝転移の診断率はsensitivity63%,specificity91%であった.これは同時に検討したCEAにおけるsensitivity63%,specificity59%に比しても,肝転移診断の特異性において有用と考えられ,臨床的な腫瘍マーカーとして有用性が示された.この結果に基づき、現在までに肝転移危険群である進行胃癌症例に対し術前の同接着分子をコントロールとして術後肝転移再発のフォローアップ実用化にむけて更に検討中である。現時点の途中経過では、術前この診断基準を満たした症例中3例に肝転移再発を確認した。
|