研究概要 |
食道癌には腺癌と扁平上皮癌の二つの組織型がみられるが、腺癌は扁平上皮癌に比して化学療法に抵抗性である.上記研究では教室と米国で同様に5-FUの化学療法を行った食道癌症例について検討し、結果を現在投稿中であるが、現在までに (1) p16遺伝子のsilultanenoussが扁平上皮癌で高頻度に生じているのに対し,腺癌ではほとんどみられないこと (2) 練癌のTSmRNA発現レベルが扁平上皮癌の3倍ほど高いこと、 などが判明した. この検討から,従来は形態病理学的な『組織型』により薬剤感受性が異なる,と説明づけられていた現象が分子生物学的にはp53,p16等の抑制遺伝子や,TS遺伝子などの発現が異なる,といった客観的な根拠を有する可能性が示唆された. 担癌患者に対して適切な化学療法を行うためには十分な信頼性のある薬剤感受性予言が必要となるが,従来開発されてきた各種感受性試験はその再現性、臨床相関などが不十分で、実際の臨床の場で感受性を予言することは事実上困難である。 教室でも今までin vitroでATP法、ATCCS法などの感受性試験の臨床応用を試みたが、ことごとく不成功に終わっていた。本研究の内容は従来行われてきた感受性試験を否定するものではないが遺伝子解析を根拠とするため,その客観性・再現性・臨床応用の可能性から判断するならば、より安定した感受性予言が可能になる公算が大きい。 現在までに我々が得た研究成果を総合すると,胃痛・大腸癌ではp53,p16.TS,ERCClの4つの指標を用いることによって80%以上のaccuracyで感受性予言が可能であるが,本研究ではさらに簡便で安定した指標となるようなcandidateの検索をすすめるとともに,集積したデータをもとに国際的にも認知されるようなqualityの高いprospective studyをデザインして行きたい.
|