研究概要 |
近年、大動脈瘤に対する低侵襲な治療法として、ステントグラフト留置術が臨床導入されたが、いまだ解決すべき問題がある。正確な位置への挿入・固定技術の改善は、ステントグラフト留置術の適応拡大に寄与すると考える。比較的低侵襲の胸腔鏡を併用利用すれば、血管外からステントグラフトの留置固定を確実に行えるのではないかとの着想に至った。本研究では、胸腔鏡から挿入可能で、血管外からステントグラフトの固定を確実にする器具(外固定デバイス)を試作し、その有効性を検討した。 (1) 解離性大動脈瘤モデルの作成 雑種成犬を用い、胸部下行大動脈に径8mmの人工血管を並列に吻合した。これを解離性大動脈瘤における偽腔と想定した。術後1カ月で人工血管が閉塞しており、モデルとして不適当であった。そこで、人工血管の代わりに、他の実験に供された成犬の上行弓部大動脈を同種グラフトと使用し、術後3カ月までの開存を確認した。解離性大動脈瘤モデルとして有用であると考えられた. 2) 外固定デバイスのデザイン・作成 シリコン被覆ワイヤーを利用し、ステントグラフトを血管外から絞扼するデバイス(a)、磁力によって、ステントグラフトの移動を予防するデバイス(b)を試作した.デバイス(a)は,胸腔鏡を通して操作が可能な形に至らなかった.デバイス(b)に関しては,シート状の磁石を血管外に巻いて、血管内の金属片を留置固定できるか基礎的な実験を行ったが,金属片を血管内に確実に固定することは困難であった.しかし,今後磁力の強い素材を入手する事ができれば,有用な手段になり得ると考えられた. 3) ステントグラフト留置時の新しい血圧低下法 以上の一連の実験中,ステントグラフト留置術中の簡便で有効な血圧低下法(血圧コントロール法)としてIVC balloon occluding techniqueを考案した.この方法を臨床症例で応用し,その有効性を報告した.
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