研究概要 |
1. ATP transporterの検討 Nitric Oxideおよびcyclic GMPは,ブタ冠動脈内皮細胞からの総プリン誘導体(ATP+ADP+AMP+アデノシン)の遊離を亢進(ATP transporterの活性化)した。 2. 細胞ATP産生能に及ぼすATP感受性K^+チャネル開口薬の影響 我々は,心単純浸漬保存においてニコランジルが細胞保護効果を有することを報告した。 虚血耐性の機序として,心筋細胞外間質のアデノシン増加に伴うアデノシンAl受容体を介するprotein kinese Cの活性化と心筋ATPの低下防止が示唆されている。 ブタ冠動脈内皮細胞にニコランジルを投与すると,プリン誘導体遊離の有意な増加が見られた。細胞外へ遊離されたATPはecto-nucleotidaseによりアデノシンに変換されることから,虚血再灌流時におけるニコランジルの心筋保護作用には,冠動脈内皮細胞からのプリン誘導体遊離作用も関与している可能性が示唆される。 ニコランジルは薬理学的に硝酸作用およびATP感受性K^+チャネル開口作用を合わせ持つ特異な薬剤である。ATP感受性K^+チャネル阻害薬であるグリベンクラミドを前処理すると,ニコランジルによるプリン誘導体遊離促進作用は減弱したが,他のATP感受性K^+チャネル開口薬であるクロマカリムはプリン誘導体遊離を促進しなかった。一方,Nitric Oxideやcyclic GMPを投与すると,プリン誘導体の遊離が亢進したことから,ニコランジルのプリン誘導体の遊離はATP感受性K^+チャネル開口作用でなく,硝酸作用によると考えられる。
|