心移植後種々の深度の免疫寛容に導入し、TH2細胞とTH1細胞から分泌されるサイトカインを測定することにより免疫寛容の深度を定量評価し、慢性期における冠動脈硬化病変から回避できるかを検討した。C57BL/10マウスをドナー、C3Hマウスをレシピエントとして異所性心移植を行い、1)抗αβT cell receptorモノクローナル抗体(mab)(H57)、2)抗CD80モノクローナル抗体(1G10)と抗CD86モノクローナル抗体(GL1)との併用の2種類にていずれも免疫寛容に導入した。 1. 移植心に発現されたサイトカインの測定によるTH1/TH2の検討 移植後7、14、50、100日目に移植心を摘出し、ホモジネートした後、上清中のIFNγとIL4を測定した。移植早期では、抗αβTCR mab投与群ではTH2優位、抗CD80/86mab投与群ではTH1優位となったが、100日目では両群ともコントロール群の値と同じとなった。 2. 移植心冠動脈硬化病変の評価 移植後50、100日目に移植心を摘出し、内膜肥厚の程度を両群で評価した。抗αβTCR mab投与群では明らかな内膜肥厚を認めたが、抗CD80/86mab投与群では内膜肥厚を認めなかった。 3. 免疫寛容導入後のalloreactivityの評価 移植後100日目にレシピエントよりリンパ球を採取し、cytotoxic assayを行った。抗CD80/86mab投与群ではcytotoxic lymphocyteは誘導されなかったが、抗αβTCR mab投与群ではcytotoxic lymphocyteが誘導された。 以上の結果よりTH2/TH1は、免疫寛容導入においては、有用な指標になるかもしれないが、遠隔期の冠動脈硬化病変の指標とはならないと判断された。
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