研究概要 |
[人凍結保存同種気管の質的評価] 凍結技術の向上に伴い、凍結同種大動脈弁、血管等が臨床に用いられるようになり、その良好な臨床成績により広く臨床応用されるに至っている。このような背景の下に心臓弁膜症の治療に用いられている凍結同種弁の技術を気管に用いられないかという観点から、我々は成犬を用いた凍結同種気管移植を行い、移植気管が免疫抑制剤を投与しなくてもその形態、機能が長期にわたり正常に保たれることを確認し発表してきた。またこの凍結保存気管移植では移植気管の気管上皮はレシピエント由来、気管軟骨はドナー由来という一種のキメラ状態であることも確認し発表してきた。今後凍結保存気管を臨床応用するにあたり、人の同種生体気管の特性を解明することは非常に重要であると考える。1996年12月,人の凍結保存気管による気管移植術の臨床応用を大学倫理委員会に提出した後,その臨床応用に向けて人気管支の凍結保存実験を行った。 【方法】 提供を受けた貴重な気管を,臨床応用するためには最低限の質的な評価を経たものでなければならない.そこで肺癌手術時に得られた切除配葉から気管支を採取し,抗菌剤を加えた4℃液体培地に浸漬後,凍結保存・解凍後に気管支の細菌培養と組織検査を行った。 1)組織の滅菌性;凍結前に抗生剤入り液体培地に保存した後、解凍前後で組織の一部を切り出し細菌学的検査を行い、凍結操作前後で組織が無菌であることを証明する。 2)解凍後の組織標本を作製し移植気管の質的評価を行う。 【結果】 6例の気管支の凍結後,及び解凍後の気管支の細菌・真菌培養はすべて陰性であった。人気管支の組織所見では、抗菌剤を加えた組織培養液に24〜48時間浸漬後は気管軟骨はその形態を維持していたが粘膜上皮はほぼ脱落しており,凍結保存・解凍後も同様の所見であった
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