研究概要 |
1. 慢性心房細動症例104例に対し,基礎心疾患手術にMaze手術を併せて行った.病院死亡は4例であったが,いずれの死因もMaze手術との因果関係はなく,また術後出血のための再開胸を2例に要した以外,重篤な合併症は認めていない. 2. 手術生存100例の遠隔期(平均5年)における基本調律の内訳は,洞調律68%,心房細動24%,洞機能不全8%と,昨年度の報告より洞調律維持率が減少していた. 3. Maze手術後に回復した洞調律例で,ホルター心電図により心拍変動を検討すると,術後早期では口内変動が消失していたが約1年後には改善傾向を示し,さらに約2年後には有意に改善をみた.症候限界性の運動負荷によっても,術後早期には心拍応答の著しい低下をきたすが経時的に改善傾向を示した. 4. 心エコー図上,調律回復後には多くの症例で心房収縮能が観察され,さらに術後経時的に改善傾向を示した. 5. Maze手術前後の血液凝固系の推移の検討で、手術後早期にはD-ダイマー,アンチトロンビンIII複合体が増加傾向にあるものの,約1年後には減少傾向を示し,さらに約2年後には有意に減少をみた,また,活性化血小板接着分子P-Selectinは,手術前後に有意な変化を示さなかった. 6. 生活の質(QOL)に関するアンケート調査で,約1年後には向上する傾向を示し,さらに約2年後には有意に向上していた. 7. 今年度までの遠隔期の血栓塞栓症は,洞調律群で1例(1.5%),心房細動群で2例(8,3%)であった.しかしながら,心房細動群の2例では,抗凝固療法が不十分であった可能性があり,人工弁関連の合併症と思われた.引き続き,長期の遠隔成績の追跡調査を行う必要がある.
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