研究概要 |
(目的)本研究の目的は、ドンリュウラットに樹立された佐藤肺癌肺転移巣を用い、その生体腫瘍微小循環観察と組織検索とを通して、どのような治療法を用いればリンパ球の抗腫瘍効果が高められるかを明らかにすることである。 (実験方法)1.佐藤肺癌肺転移巣の作成:ドンリュウラットに樹立された佐藤肺癌を腹腔に移植し、この癌性腹水より癌細胞を106個取り出し、これを尾静脈より静注すると、約7日目に腫瘍細動脈、腫瘍毛細血管、腫瘍細静脈を備えた肺転移巣ができあがる。 2.A:無処置群、B:肺転移巣群(無治療群)、C:単独免疫治療法群(腫瘍静注後7,8日目にOK-432を投与する)、D:単独化学療法群(7,8日目にCDDPを投与する)、E:化学・免疫療法群(7日目にCDDPを、8日目にOK-432を投与する)など5群に分けて、生体腫瘍微小循環観察と組織像の観察とを行った。3.生体腫瘍微小循環は蘇原らの方法(脈管学27:113-120,1987)に準じた。組織はHE染色で観察した。 (実験成績)1.生体腫瘍微小循環観察では、B,C,D群などの腫瘍微小血管にリンパ球付着は全く見られなかった。一方、E群では腫瘍微小血管に多数のリンパ球の付着が認められた。2.組織標本の観察では、B,C,D群などの腫瘍微小血管にリンパ球浸潤はあまり見られなかった。E群ではリンパ球や単球の浸潤が多数認められた。 (結論)化学・免疫療法は抗腫瘍活性の高いリンパ球の放出を促す可能性がある。
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