研究概要 |
先天性心疾患における,刺激伝導系の走行を三次元的に解明するのが本研究の主たる目的である。まず多脾症候群症例について刺激伝導系走行近傍の心室中隔部のブロック標本を作製し,10μm毎に連続切片標本を作製した。次にその切片画像をコンピューター上にとりこみ,刺激伝導系組織のマーキングを行い専用のsoftを用いて立体三次元再構築モデルを作製した。あらゆる角度から検索した結果、中心繊維体の一部である膜性中隔から心室中隔欠損孔下縁を通過する通常の後方房室伝導路が左右脚に分れるbifurcating bunndleにて、第三の脚を分岐し、これが欠損孔前縁を上行するのが確認された。そして,この脚はslingが一部退縮したdead end tructであることが確認された。また,あるプレーン上では,このdead end tructと右脚がほぼ同一軸上にあることが明らかになり,房室結節と右脾も同一軸上にあることから,これは多脾症候群におけるslingの場合,前方房室伝導路からも解剖学的に右脚、左脚へ滑らかに連続していることが想定され,このような場合には心内修復術の際に,これらの特長を念頭において前方房室結節,後方房室結節の位置と共に房室間刺激伝導路の正確な走向を予測する必要があると考えられた。 現在は,先天性完全房室ブロックのあった総動脈幹症症例において刺激伝導系組織が途中で消失していることがわかり,左室型単心室,極型ファロー四徴症,左心低形成症候群,房室中隔欠損症,血管輪などの症例についても研究を進めているところである。
|