研究概要 |
当該年度は,聴覚および視覚による一次反応,二次反応の信号源と,聴覚性言語刺激および視覚性言語刺激による反応との違いに重点をおいた研究を行った.第1に,純音刺激聴覚誘発反応のN100m反応が,これまで一次聴覚野由来とされていたにも関わらず,実際には一次聴覚野よりもわずかに後方で,聴覚連合野にも由来する可能性をとらえ,これを発表した.これによって,聴覚誘発磁界の信号源における左右半球較差を,脳機能の左右差や解剖学的左右差とあわせて論じることが可能となった.第2に視覚誘発磁界においては,N75m反応,P100m反応のみならず,N145m反応さえも一次視覚野由来と考えられる知見を得,これを発表した.これらの比較的遅い潜時ではすでに言語に関する処理が始まっているとも考えられるが,それでもなおかつ一次視覚野が活発に活動している証拠をとらえたことになり,高次脳機能における一次感覚野の重要性を示唆する所見としてとらえられる. さらに当該年度では,広がりを有する脳磁図信号の解析アルゴリズムの開発として,フラクタル等の統計物理学的手法を導入したアルファ波解析と,頭部の解剖モデルに基づいた磁場源推定モデルの開発を行った. 応用面では,脳磁図を用いた非侵襲的な脳機能マッピングに加えて,覚醒手術下における大脳皮質電気刺激による言語機能マッピング法を確立し,手術ナビゲーションシステムとの併用により,脳腫瘍の摘出術や,てんかん外科手術に応用した.
|