研究概要 |
これまでの研究で、髄芽腫細胞株のD283に神経成長因子(NGF)の受容体であるTrkを遺伝子導入したD283trkが、NGFにより細胞死(アポトーシス)を起こすことを示してきた。今回その再現性をみるため、同一患者から得られたD425(原発巣)とD458(播種した細胞から)細胞株に同様にtrkA mRNAを導入した。この高発現細胞(D425trk,D458trk)にNGFを添加すると、D425trkはD283trkと同様短期間でapoptosisが誘導されたが、D458trkは長期間のNGFの添加により、分化が誘導されることを示した。このD425trkとD458trkの分子機構の違いを時系列で詳しく検討した。Northen blottingを用い、NGF添加前と12時間、24時間、72時間後のD425,D425trk,D458,D458trk細胞のRNAで比較した。NGF添加12時間後でtrk細胞はすでにtrkAをupregulateしており、時間経過とともにその発現量を増していた。また他のNGF receptorであるp75NGFRはD458trkにおいて72時間後に発現してきたが、他の細胞には発現していなかった。またp75NGFR蛋白の発現は免疫染色で見たところ、一週間後にはっきり発現が認められた。今回の実験により、各細胞間での発現の違いだけでなく、時間経過でtrkA,p75NGFRの発現のパターンを示すことができた。
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