研究概要 |
膝前十字靭帯(ACL)損傷が発生するのは,ストップ動作,ジャンプ動作,着地動作,方向変換動作などのスポーツ動作である。これらの動作では膝関節に回旋運動が起こっているが,ACL損傷でどの程度回旋運動に影響が及ぶのか正確な報告は少なかった。平成9年度は,膝関節に既往のない健常者に対し回旋角度を測定し,さらにテーピングにより回旋角度が制限されるかを確認した。平成10年度ではACL損傷膝とACL再建術後膝について運動動作中の回旋角度を比較した。 対象は男女5名ずつ計10名のACL損傷膝である。全例スポーツによる受傷である。再建術前に坐位での非荷重下で膝関節屈曲90゚からの伸展動作,および立位での荷重下でストップ動作時(膝関節伸展位から屈曲90゚まで)の膝関節の回旋運動を磁気センサー式3次元空間測定装置(3-SPACE WIN,エムピージャパン)を用いて測定した。さらに,上記の対象について自家半腱様筋ならびに薄筋を用いたACL再建術を施行後6カ月において同様の測定を行った。いずれも5回測定し平均値を代表値として扱った。結果として、1.ACL損傷膝の回旋角度は、非損傷側や健常者の回旋角度に比較して有意に大きかった(P<0,05)。 2.再建術後の回旋角度は、非損傷側と有意差がなくなった。また、健常者の回旋角度に比較しても有意差はなかった。 3.ACL損傷膝、ACL再建膝、ACL損傷者の非損傷側、健常者のいずれにおいても非荷重での回旋角度が、荷重位より有意に大きかった(P<0.05)。荷重位で膝関節は上下の関節からアライメントコントロールを受け、回旋角度が減少するのではないかと考えられた。
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