研究概要 |
(実験方法)金属製人工関節骨頭しゅう動部材が最近見直されている,金属材料はセラミックスほど化学的に安定ではないため溶出金属量を極力少なくする必要がある.不働態膜維持性能を指標に各種金属対UHMWPEの摩擦による不動態膜損傷度について検討した。供試材料としてSUS316Lステンレス鋼,Co-28Cr-6Moコバルトクロム合金,Ti-6A1-4vチタン合金を用いた. Pin-on-Disk型一方向回転型摩擦試験機を用いて金属表面を種々の摩擦速度,静荷重条件で摩擦した.その間,ポテンチョスタット腐食試験測定機を用いて,不働態膜が破壊され金属と腐食液間の電位を測定し、摩擦時の不動態膜損傷度を, 損傷度(%)=(腐食電位-自然電位)/(全破壊電位-自然電位)・100で定義した。ただし,全破壊電位とは同種金属で摩擦した場合の発生電位のことでこれによって不動態膜は完全に破壊されたものと見なした. (結果)いずれの金属も自然電位は0〜-0.02V(vs.SCE)であった.摩擦速度108mm/sでは,SUS316L鋼の不動態膜損傷度は摩擦面圧16Mpa以下で20%から55%に増大し,それ以上の摩擦面圧で50%から68%の値を維持した.Co-Cr合金はSUS316L鋼と類似の傾向を示したが摩擦面圧24MPaまで10%から60%の損傷度であった.またそれ以上の摩擦圧では60%の損傷度を維持した.チタン合金は摩擦面圧10MPaですでに損傷度は60-70%に達し,20MPa以降漸次増大し,50Mpaでは87%に達した.
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