研究概要 |
研究者のグループは、平成9年度から10年度にかけて神経切断したシャルコー家兎、およびインターロイキン1を関節内に投与した関節炎家兎の膝関節にチロシンキナーゼ阻害薬を投与し、関節の骨破壊像を病理組織学的に検討することにより、チロシンキナーゼ阻害薬の破骨細胞不活性化作用を応用した骨吸収性疾患に対する骨吸収抑制薬としての可能性を検討した。まず、我々は以下の準備実験を行った。a,家兎膝関節内にインターロイキン1β(IL-1β:50U/kg)を週1回のペースで12週間投与し、投与開始3週後より関節の腫脹が開始し約8週後より骨・軟骨に浸潤性病変が認められることを確認した。b,家兎膝関節周囲の知覚神経走行に沿ってアルコール固定を行い、無知覚関節モデルを作成後、回転ゲージ内にて強制運動を行わせることによりシャルコー関節を再現した。c,上記実験a,において、IL-1β:50U/kg投与時にチロシンキナーゼ阻害薬であるゲニシュタイン(10μg/kg)を同時投与し、骨・軟骨病変の程度をIL-1β単独投与の場合と比較検討したところ、浸潤性病変の程度は軽減した。 d,上記実験b,において、強制運動の開始前にゲニシュタイン(10μg/kg)を週1回関節内に投与し、非投与の場合と比較検討したところ、シャルコー様骨破壊は見られなかった。 以上の結果より、シャルコー関節の骨破壊過程においてチロシンキナーゼの活性化(おそらくαvβ3インテグリンを介する)が関与しているものと考えられた。これを制御することにより、シャルコー関節に対する新しい治療法が可能となることが予想される。
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