研究概要 |
1. 吸入麻酔薬が肝細胞からのラクテート放出に及ぼす影響 初代培養肝細胞を好気的条件で各種吸入麻酔薬(ハロセン,イソフルレン,セボフルレン) 1〜5%下で2時間インキュベーションし、上清液中のラクテート放出量を検討した.いずれの吸入麻酔においても濃度依存性にラクテート放出量が有意に増加した. 2. ドパミンが肝細胞からのグルコース放出に及ぼす影響 初代培養肝細胞を用い,ドパミンによる肝グリコーゲン分解作用および糖新生作用を検討した.グリコーゲン分解作用はグリコーゲンを豊富に含有する培養肝細胞を用い,糖新生作用はグリコーゲンを枯渇させた培養肝細胞を用いた.ドパミンは10^<-5>M以上の濃度でグリコーゲン分解作用および糖新生作用によるグルコース放出が有意に増加した.さらにそれらの作用はβ遮断剤であるプロプラノロールにより消失した.したがって,ドパミンは肝細胞のβ受容体に作用してグリコーゲン分解および糖新生によりグルコースを放出させる作用を有すると推察された. 3. グリコーゲン含有量の異なる培養肝細胞の作成 種々の細胞障害実験における肝の栄養状態の違いの影響を検討する目的で,グリコーゲンに乏しい肝細胞からグリコーゲンに富む肝細胞まで種々のグリコーゲン含有量を持つ培養肝細胞モデルを作成した.培養液のグルコース濃度を調整し,初代培養した.蓄積したグリコーゲン量は培養液中のグルコース濃度に依存して増加した.また,培養細胞内外のLDH活性度はグリコーゲン含有量の異なる培養細胞間で有意差はなく,グリコーゲン含有量が異なり,細胞のバイアビリティーに差のない培養肝細胞モデルを作成できた.このモデルを使用し,種々の細胞障害実験における肝の栄養状態の違いの影響を検討できると考えられる.
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