研究概要 |
ラットにエンドトキシンを投与して作成した敗血症モデルを用いて薬物代謝実験を行った。その結果、アニリン、クロールゾキサゾン、ミダゾラムの中で最も大く代謝が低下した基質はミダゾラムであった。ミダゾラムは静脈内麻酔薬として汎用されているため、まずミダゾラムの代謝について検討した。ラットより得た肝臓のミクロゾームによるミダゾラム代謝活性を検討したところ、フェノハルビタールを投与したラットより得たミクロゾームで代謝が亢進し、IL-1、IL-6を投与したラットより得たミクロゾームでは代謝が阻害された。したがってミクロゾーム中の特定のP450分子種がミダゾラムの代謝に関与していると考えられ、次にラット肝ミクロゾーム中のP450分子種を用いて研究を行ったところ、P4503A2のみがミダゾラム代謝活性を有することが明らかになった。 P4503A2を用いたミダゾラム反応系にIL-1、IL-6を加えたところ代謝が阻害されたことから、敗血症の際に生ずるエンドトキシンはCYP3A2を阻害し、薬物代謝を阻害することが判明した。次に同じP4503Aで代謝される基質としてフェンタニールをミダゾラムの代謝の反応系に加えて代謝の阻害様式を検討したところ、Lineweaver-Burk plotより、競合阻害であることが判明した。IL-1、IL-6を用いた場合も同様にミダゾラムの代謝の阻害が生じたが、阻害形式は特定できず、今後検討を重ねてゆく予定である。 次に、肝臓のミクロゾームのP450mRNAと,リンパ球のP450mRNAの関係について比較を行った。P450分子種としては、リンパ球中で比較的mRNAの含量の多いP4502E1とP4503A2を選んだ。フェノバルビタールを投与したラットにおいては、肝臓のミクロゾームのP4503A4やP4503A4mRNAと同様にリンパ球のP450mRNAが増加しており,P450mRNAの誘導が先ずリンパ球で生じ、これが肝臓に波及する可能性が示唆された。
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