研究概要 |
腎結石患者腎におけるPeak3の発現を免疫組織学的に検討した結果、カルシウム含有腎結石患者腎の方がコントロール腎より強陽性例の比率が減少しており、腎結石患者腎の遠位尿細管および集合管は正常腎よりPeak3の発現が減少していると考えられた。結石患者においてPeak3の発現が減少することで、結石形成がより促進されるということは、Peak3が尿路結石形成のinhibitorの一つとして機能していると考えられる。 次に同様に精製したヒト尿中シュウ酸カルシウム結晶成長抑制物質であるPeak3のアミノ酸配列の同定を行った。Peak3の抗血清と反応させたWestern blottingの結果、30-45KDaの幅広いバンドが検出された。そのバンドをPVDF膜に転写後、protein sequencerでアミノ酸配列の解析を行った結果、bikuninのN末端12残基と100%一致したため、Peak3はbikuninであることが確認された。bikuninはInter-α-trypsin inhibitor(ITI)のlight chainである。ITIはHC1,HC2,bikunin,コンドロイチン硫酸鎖から構成される分子量23万の三量体でシュウ酸カルシウム結晶成長阻止物質として知られている。HC1,HC2がヒアルロン酸と結合する際にその遊離が起きる。2個のKunitz型trypsininhibitor domainを有するためprotease阻害活性をもつ。Bikuninは膵炎治療薬として市販されているウリナスタチン(商品名ミラクリッド)とほぼ同一物質であり、それらのシュウ酸カルシウム結晶成長抑制効果を比較検討したところ、Peak3はウリナスタチンより低濃度で強いシュウ酸カルシウム結晶成長抑制活性を有していることが判明した。Peak3,bikunin,ウリナスタチンはほぼ同一物質であり、今後これらの尿路結石症治療薬への応用が期待できると考えられる。 これらの結果は、第85回日本泌尿器科学会総会、第343回日本泌尿器科学会北海道地方会等で発表した。
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