| 研究概要 |
ヒト正常尿路性器組織における神経成長因子受容体(低親和性神経成長因子受容体:LNGFR、高親和性神経成長因子受容体:TrkA,TrkB,TrkC)の分布に関する免疫組織学的並びに分子生物学的研究。
1) 膀胱:膀胱粘膜層にはLNGFR神経は豊富に存在し、知覚求心性神経としての役割を担っている可能性が示唆された。膀胱筋層では平滑筋組織のみならず、間質にもLNGFR陽性神経が認められた。2)尿道:(1)男性前立腺部尿道:粘膜、筋層にLNGFR陽性神経とTrkA陽性神経が認められた。(2)女性尿道:粘膜、筋層にLNGFR陽性神経を認めたが、遠位部尿道に比べ近位部尿道においてLNGFR陽性神経線維数は多く、女性の尿禁制に対し何らかの形で関わっている可能性が示唆された。3)前立腺:免疫組織学的検討(1)transition zone:間質組織内にLNGFR陽性神経、TrkA陽性神経、TrkC陽性神経を認めたが、TrkB陽性神経は認めなかった。腺上皮細胞はLNGFRとTrkBで陽性を示した。(2)前立腺被膜:LNGFR,TrkA,TrkC陽性神経が認められた。前立腺では神経成長因子受容体は腺分泌にも関与している可能性が示唆された。分子生物学的検討;transition zoneより採取した組織よりRNAを抽出し、逆転写によりcDNAを作成した。PCR,Southern blot hybridizationによりTrkB,TrkCの存在を遺伝子レベルで確認した。4)陰茎:陰茎海綿体、白膜にLNGFR陽性神経を多数認め、特に陰茎海綿体内の動脈周囲に豊富に存在していた。一酸化窒素合成酵素含有神経(NADPH-diaphrose染色)との分布の比較では、陰茎海綿体および白膜にNADPH陽性神経を多数認めたが、海綿体内の動脈の中・外膜に多く存在し、明らかにLNGFRとは分布様式が異なっていた。LNGFRは勃起に関して一酸化窒素とは異なる機構に関与している可能性が示唆された。
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