われわれは、平成9年度中の検討で、テロメラーゼ活性をPCRをベースとした高感度の検出法であるTRAP法を用いることにより、約40例の膀胱癌腫瘍組織において約90%以上の陽性率を認めた。さらにテロメラーゼ活性を協和メディックスのキットを用いて定量化することにより、腫瘍のstageやgrade間でテロメラーゼ活性の強さに差がないことを示した。また、胱癌患者より尿中剥離細胞を採取して、これのテロメラーゼ活性を定量的に検討し、その結果、尿細胞診に優るテロメラーゼ活性の陽性率が認められた。 平成10年度においては、今回の研究の目標である腫瘍マーカーとしての有用性を検討するため、より簡易なテロメラーゼ活性定量化法の検討を行う目的で、中外製薬との共同研究により、TRAP/HPA法の検討を行った。この方法はHPA法をTRAPと組み合わせることにより、より簡易で定量的な測定を行なうものである。これにより従来法では約24時間かかっていたassayが、約1時間で可能となった。このassayによる尿中剥離細胞のテロメラーゼ活性の陽性率は、sensitivityが63.4%、specificityで91.3%と従来法に比してやや劣るものの、特に従来尿細胞診において検出率の低かったgrade 1の膀胱癌症例において、尿細胞診の2倍以上の陽性率が得られ、今後の新しい腫瘍マーカーとしての可能性が示唆された。 また、in situ TRAPによる細胞レベルのテロメラーゼ活性の検討を行なった。J-82、HT-1376などの膀胱癌のcell lineでは明らかなテロメラーゼ活性が腫瘍細胞において認められたが、尿中剥離細胞における検討では、条件をいろいろ変えて検討したが、膀胱癌患者以外の症例における尿中剥離細胞において擬陽性が多く認められたため、有意な結果が得られなかった。これは、primerやPCR条件だけでなくDNAse処理などの細胞処理の不具合も考えら、今後さらに検討を要すると思われた。
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