【目的背景】 VBP-1遺伝子の機能解析の一つとして、VBP-1遺伝子を遺伝子操作でリコンビナント蛋白質として発現させ、それに対するモノクローナル抗体を作製し免疫分析を行い、体液中でのVBP-1遺伝子産物のレベルと疾患との関係から腎細胞癌の腫瘍マーカーとしての有用性について検討した。 【方法】 1;VBP-1遺伝子のリコンビナント蛋白質に対するモノクローナル抗体作製 2:免疫組織学的染色 3;RT-PCR 4:アフィニティカラム5;サンドイッチELISA法 【結果】 1;免疫組織学的染色 腎細胞癌の組織学的細胞型別に淡明細胞型13例、混合型7例、顆粒細胞型3例、紡錘細胞型1例、Bellini管癌1例をABC法で染色した。染色陽性率は淡明細胞型が84.6%混合型が71.4%顆粒細胞型、紡錘細胞型、Bellini管癌は染色されなかった。2;RT-POR腎細胞癌部分ではVBP-1発現を認めるが、正常腎部分ではVBP-1の発現は見られなかった。3;アフィニティカラム 健常人2人、腎細胞癌患者3人の血清より抗体アフィニティカラムで天然型の蛋白質VBP-1を抽出した。4;ELISA法 腎癌患者12例の血清レベルは490nmで0.005から0.252平均0.090、正常人12例の血清レベルは0.002から0.084平均0.027と明らかに有意に腎癌患者血清で高いレベルであった。 【考察】 腎癌に対する腫瘍マーカーの研究は未だ摸索の域を脱しておらず、特異的な腫瘍マーカーの出現が腎癌においても要求されるところである。 VBP-1を遺伝子操作リコンビナント蛋白質として発現させ、それに対するモノクローナル抗体を作製することができた。作製したモノクローナル抗体による免疫組織染色(ABC法)では淡明細胞型の腎細胞癌のみが染まった。次にRT-PCRではVBP-1のmRNAの発現が腎細胞癌組織にのみ見られた。これらのことより、VBP-1遺伝子産物は腎細胞癌とVHL遺伝子産物を介して深く関係があるようであり、VBP-1の存在を確認することが腎細胞癌を発見する一つの指標になる可能性がある。VBP-1の存在は腎臓組織からだけでなく、血清からもアフィニティカラムを用いて確認できた。3つのモノクローナル抗体が作製したサンドイッチELISAでVBP-1の血中濃度を測定できtたことから腎細胞癌の腫瘍マーカーに成りうると考えられた。
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