研究概要 |
教室に保存されている128人の自然発生尿路上皮腫瘍患者のパラフィン包理組織を対象に、まずp53(Pab1801,Oncogene Science),PCNA(proliferating cell nuclear antigens)抗体を使用した免疫組織化学的手法から,これら発現蛋白のパターンおよび発現蛋白を定量(score)化し、同時に浸潤癌(膀胱全摘群),非浸潤癌群間(TUR群)の過剰蛋白発現の差異もあわせて比較検討した。結果はどちらの抗体scoreも腫瘍の組織学的grade,stageに対して有意に相関した。再発に関する検討では、両群ともどちらの抗体に対しても相関は認められなかったが、PCNA抗体の発現性は生命予後と有意な相関を示した。以上より、p53およびPCNA抗体の発現は尿路上皮腫瘍の組織学的所見と相関する。さらにPCNA抗体の発現は、自然発生尿路上皮腫瘍患者に対する初期治療選択に際して、有意な臨床情報となる可能性が示唆された。次に和歌山市で発生が確認され、教室に保存されている職業性尿路上皮腫瘍患者20人のパラフィン包理組織をp53抗体で染色を試みたが、薄切が硬くて均一にならず、そのため染色もうまくできなかった。はっきりした原因は不明だが、検体の保存条件によるものと考えている。現在、新しいミクロトームを使用し、条件を工夫して職業性尿路上皮腫瘍染色を再度行っている段階である。
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