研究概要 |
ヒト前立腺癌培養細胞株(アンドロゲン依存性増殖細胞LNCap,JCA-1,およびアンドロゲン非依存性増殖細胞DU-145,PC-3)におけるエストロゲンレセプター(ER)の発現をRT-PCR法を用いて確認した。また極く最近の知見として従来のER(ER-α)に加えて、異なるERの存在(ER-β)が明らかとなった。今回は従来のER(ER-α)に加え、ER-βの発現についても確認した。またRT-PCR法におけるpositive controlは乳癌細胞株MCF-7を用いた。ER-βは全ての細胞株に発現を認めたが、ER-αはLNCap,JCA-1のみに発現を認めるに過ぎなかった。また発現を認めたER-αには全てN末端のmutationが認められた。LNCap,PC3に対してはβ-estradi ol(E2)0.01nM、1nM、100nM、およびそのantagonistであるtamoxifen(ICI-182780)1nMを投与後、72時間混合培養した後に増殖抑制効果を吸光度測定法にて確認した。LNCapにおいてE2単独投与(0.01M、1nM、100nM)ではそれぞれcontrolに対して125%、183%、225%(中央値)と濃度依存性に増殖が確認されたが、その増殖効果はtamoxifenの同時投与により完全に認められなくなった。PC3に対しても同様に各薬剤との混合培養を行った。E2の単独投与にてcontrolに対して79%、65%、49%(中央値)と濃度依存性の増殖抑制が認められたが、その効果はtamoxifenとの混合培養後でも有意な細胞数の変化は認められなかった。臨床検体への応用として9例の前立腺癌患者の前立腺全摘術から得られた未治療前立腺癌組織に対しRT-PCR法を用いてER-α、βの発現を検討したところ、全例にER-α、β両者の発現が確認された。今後治療後の検体(剖検検体)においても検討を予定している。
|