研究概要 |
褐色細胞腫の良性、悪性の鑑別診断はきわめて困難で、今までその鑑別のために様々な検討がなされてきた。当研究では、褐色細胞腫で明らかな変異が報告されているp53遺伝子,RET遺伝子,VHL遺伝子に関して、良性及び悪性褐色細胞腫につきその変異の検討を行い、その鑑別のための遺伝子レベルでの診断基準を定めることを目的とした。 平成9年度は研究計画どおり、実験系の確立を行った。 平成10年度は慶應義塾大学病院において悪性褐色細胞腫と臨床的に診断のついた症例5例および良性褐色細胞腫20例において、p53遺伝子、RET遺伝子、VHL遺伝子の変異の有無を、平成9年度に確立した実験系により検索した。各遺伝子の変異は、p53遺伝子:良性(2/20)、悪性(1/5)、RET遺伝子:良性(1/20)、悪性(0/5)、VHL遺伝子:良性(1/20)、悪性(0/5)であり、明らかな差異は認められなかった。またレトロスペクティブに臨床経過との関係を検討したが、遺伝子変異との相関に明らかなものはなかった。結果としてそれぞれの遺伝子の変異の有無によって、悪性褐色細胞腫の発生の差異、臨床症状やホルモン産生能の差異があるとは言えなかった。 また副腎外褐色細胞腫6例の遺伝子変異を検索し、副腎発生の褐色細胞腫との差を検討したが同様に明らかな相関はみられなかった。 今回の検索では明らかな差異がみられなかったが、諸家の報告には差異があるとするものがあり、今後も症例があれば検索し症例数に加えていきたいと考える。
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