研究概要 |
精子は受精に先立って先体反応を起こすが、その誘起物質としてはZP3・卵胞液・progesterone等が知られている。血小板活性化因子(Platelet-activating factor:PAF)はリン脂質性のケミカルメディエーターであるが、PAFも先体反応を誘起する事が知られている。昨年度の本研究では、精子におけるPAF合成系のkey enzymeであるalkylglycerophosphate:acetyl-CoA acetyltransferase活性がprogesteroneによって亢進する事を明らかにしたが、本年度は精子における本酵素の活性調節機構を検討した。 ラット精巣上体尾部より精子を調製しmodified Krebs Ringer Bicarbonate buffer中で5時間前培養(37℃,5% C02in air)した後、progesterone(1μ9/ml)、Ca^<2+>ionophore A23187(10μM)、phorbor 12-myristate 13-acetate(PMA;0.1μM)、forskolin(10μM)、dibutyryl cAMP(dbcAMP;1mM)、vehicleを添加して15分間培養し、精子におけるalkylg1ycerophosphate:acetyl-CoA acetyltransferase活性を測定した。PMA、forskolin、dbcAM添加群の酵素活性はvehicleを加えた対照群の各々97%、96%、89%と活性の上昇を認めなかったが、progesterone、A23187添加群では各々128%、120%に上昇した。progesteroneは精子細胞質内Ca濃度を上昇させることが報告されているので、progesteroneは細胞質内Ca濃度の上昇を介して本酵素を活性化させる可能性が示唆された。また精子は精巣上体を移動する間に成熟するので、精巣上体頭部および尾部精子における本酵素活性を比較した。その結果、頭部精子の酵素活性は0.72±0.17nmol/min/mg protein(n=4,mean±S.D.)、尾部精子は0.25±0.04nmol/min/mg protein(n=4)と尾部精子の本酵素活性は有意に低かった(p<0.005)。
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