研究概要 |
【目的】 尿路結石のマトリックス成分の一つであるオステオポンチン(OPN)の構造上のどの部分が結石形成に深く関与するのかを検討した。 【方法】 RIカウントを用いたシードクリスタル法と全尿法で、蓚酸カルシウム結晶に与える影響を種々の条件で作成したOPNで比較検討した。またこれらの結晶を走査電子顕微鏡で観察し、その作用機序を結晶の形態的変化から検討した。材料には、ヒトのrecombinant OPN(rOPN),ヒト母乳から精製したnativeOPN(nOPN),nOPNの精製過程に有機溶媒を用いたdenatured OPN(dOPN),nOPNに対してそのシアル酸を酵素で除去したasiaro OPN(aOPN)である。 【結果】 シードクリスタル法の結果は、蛋白濃度が15μg/mlで抑制活性は、nOPN(82%),aOPN(56%),dOPN(49%),rOPN(15%)であった。全尿法では、150μg/mlのOPN濃度で抑制活性は、nOPN(38%)、aOPN(21%)、dOPN(21%)、rOPN(0%)。さらにこの時のnOPNについて、結晶を電子顕微鏡で観察したところ、nOPNは蓚酸カルシウム結晶の凝集を主に抑制している事が判明した。 【結論】 nOPNはシードクリスタル法のみならず全尿法でも抑制活性を有していたことにより、生体内でも結石形成に対して重要な役割をはたしている可能性が示唆された。またこの抑制活性は蛋白の一次構造によるものではなく、OPNの高次構造や側鎖のシアル酸が深く関与していると考えられた。さらにこの抑制活性は結晶の凝集の阻害によるものであることが明らかとなった。
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