研究概要 |
1, ヒト子宮内膜症および卵巣腫瘍組織においてSHBG wild-type mRNAの他にステロイド結合部位をコードしていると考えられているexon7が欠失したSHBG exon 7 splicing variant mRNAが発現しており、ヒト正常子宮内膜と比較して子宮内膜症組織ではSHBG variant mRNAレベルおよびSHBG variant/wild-type mRNA比は有意に高く、エストロゲン依存性の増殖・進展をする子宮内膜症の病態と関連していると推測された。正常卵巣組織と比較して、良性卵巣腫瘍ではSHBG variantおよびwild-type mRNAレベルは有意差無いものの、卵巣癌では絶対的もしくは相対的なSHBG variant mRNAの高発現を示し、卵巣癌は、その癌化に伴ってSHBGに関連したステロイド作用機構から逸脱している可能性が示唆された。 2, 高分化型子宮内膜癌細胞株に対する各種ステロイド添加実験において、プロゲスチンの細胞内SHBG抑制効果はエストラジオールによるプロゲステロンレセプター(PR)の誘導や、抗プロゲスチン剤のPRの競合阻害効果によって変化が認められなかったことより、プロゲスチンはPRを介さずに細胞内SHBGの産生を抑制し、ある種の子宮内膜癌の発育・進展の抑制に関与していると考えられた。 3, ヒト黄体において、エストロゲンレセプター、PR、アンドロゲンレセプターといった性ステロイドレセプターmRNAが発現しており、その発現レベルは分泌期初期・中期よりも後期に低く、黄体の機能的life-spanと関係していると考えられた。また、PRのisoformであるPR form A,form Bの両方が発現しており、血清ホルモン値との相関により、特に分泌期初期から中期にかけて黄体のステロイド作用機構の制御に関連している可能性が考えられ、さらに分泌期後期にむかってPRの制御機構が正常から逸脱していくことが推察された。
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