研究概要 |
近年抗リン脂質抗体と反復血栓症、反復流産、血小板減少症との関係が注目を浴びている.中でも抗リン脂質抗体と、血栓症または血栓症と関係の深い妊娠中期以降のfetal lossとの関係は解明されつつあるが、初期流産との関係については疑問の声も多い.また、一口に抗リン脂質抗体といっても、その種類は多様であり、現在cardiolipin(CL)やphospatidylsedne(PS)などの陰性荷電リン脂質に対する抗体の目標抗原としてβ_2glycoproteinI(β_2GPI)やprothrombinなどが挙げられている.我々は、中性のリン脂質のphosphatidyl-ethanolamine(PE)に対する抗体の目標抗原としてkininogenを発見した.平成9年度に我々は、反復初期流産患者に限定して電気的陰性および中性リン脂質両者に対する12種類の抗リン脂質抗体のスクリーニングを施行した.その結果、従来より一般的に測定されてきた抗CL抗体やlupus anticoagulantの陽性頻度は低く、kininogen認識する抗RE坑体が高頻度に検出される事を報告した(Fertil Steril,1999,in press). さらに、不育症のスクリーニングにより見い出された抗PE抗体のエピトープを検討したところ、kininogendomain 3(D3)を認識することが強く示唆された.そこで、D3のアミノ酸記外を基に合成ペプチドを作り、その認識部位のマッセングを施行したところ、cystein protease inhibitor活性を有するQVVAGを認識する患者の存在が示唆された.このことにより、kininogenを認識する抗体は、cysten proteinseである血小板calpainのkininogenによる阻害をブロックすることにより血小板凝集能を亢進させる事が示唆された。
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